2007年02月13日

転転

シユミーズを盗られてかへる街風呂の夕べひつそりと月いでて居り (中城ふみ子

おや、と思う。
足の指が足りない。
ひい、ふう、みい。
タケノコトリさんは数える。
が、足りない。
歩くたんび減っていく。
マンホールに指が転がり落ちる。
あら、と声にする。
ぽとり、耳が落ちる。
眼球が落ちる。舌が抜け落ちる。
するりとマンホールに飲みこまれる。
まあ、と覗きこむ。
マンホールからうさぎがやってくる。
こんにちは、うさぎは云う。
こんにちは、タケノコトリさんは応える。
タケノコトリさんの指やらなんやらを持っている。
うさぎはうさぎの尾やら耳やら脚をタケノコトリさんに取りつける。
うさぎはタケノコトリさんの表皮をひん剥いて、纏う。
手際が良い。
さようなら、タケノコトリさんのなりをしたうさぎは云う。
さようなら、うさぎのなりをしたタケノコトリさんは応える。
月の照る夜はいつもこうである。
急いで帰らねばならない。
20050122
posted by 日菜清司 at 20:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月06日

燐光

あの冬の祖母が無理矢理つれてきた紫パーマの女祈祷師 (笹公人

いつぞやのむらさきさんが死んだ。
むらさきさんは何度も死ぬ。
子供を生むたんび死んでしまう。
ほんとうの名前は知らない。
紫の鰭でゆらと泳ぐのでそう呼んでいる。
平生は魚の態をしている。
子供を生むとき人のような態になる。
鰭がすうとなくなる。
小指の先ほどの子供を生む。
じきに掌ほどに成長する。
紫の鰭でゆらと泳ぐのである。
そうすると子供を生んで、死ぬ。
生まれた子供は子供を生んで、死ぬ。
人のような人ではないような態で死んだむらさきさんたちを壷にぎゅうと入れる。
いいのいいの、だか。
いやよいやよ、と聞こえる。
幾千万のむらさきさんを埋めてきた。
20041105
posted by 日菜清司 at 20:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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