2006年05月23日

江湖

陸で溺れるぼくたちはこんなにもシャツを洗えるみずうみをもつ

蛙に誘われて枯れた泉の底を拭きに行く
夏至でございますし、蛙は云う
このような古式ゆかしき泉磨きでもひとついかがでしょうか
そういうわけで泉を拭いている
蛙に誘われては断れない
乾雑巾で拭く
これが骨である
でこぼこで膝を剥く
枯れた泉は相当に広く荒れている
蛙は手際よく磨いていく
ぴょん、ぴょん、と四隅を輝かせる
さて、蛙は云う
こんなものでございましょう
来年の夏至はあちらの泉を磨きに参りましょう、と
豊潤な泉を指差す
あれは豊かな泉ではないですか、ぼくは問う
枯れてしまうとは到底思えません、と
いいえ、蛙は応える
どんな泉も必ず枯れるのでございます
そしてその底を拭いてやるとふたたび豊かな水が湧きだすのでございます、と
蛙は緑のシャツを脱いで磨いた泉に跳びこむ
枯れた泉から新しい水がふつふつと湧きだす
蛙はどことなく先ほどよりも蛙らしく見える
060523
posted by 日菜清司 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | my song | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月17日

音容

抱くとき陽射しの匂うやさしさはピアノの蓋にちるさくら花 (加藤治郎

眠るタケノコトリさんの唇に女の子がいる
上唇に頭を乗せて下唇で脚をばたつかせている
薄桃のワンピースを着た女の子である
こんな女の子はついぞ見たことがない
こんにちは、ぼくは云う
ふりゅららったりゅっぱ、女の子は応える
おいで、ぼくは手を差し出す
りゅら、女の子は背中の羽根をはためかせる
楕円の弧を描いてすうと飛ぶ
ちょうちょ、ちょうちょの唄の速さで飛んでくる
楕円の頂点で動きを止める
大丈夫ですか、ぼくは問う
りゅら、りゅうらたっぺ、女の子は応える
静かに羽根を畳んで下降する
ぼくの手のひらに乗る
てんでやわらかい
壊さないよう指を折る
タケノコトリさんは眠っている
唇に女の子をそっと戻す
060509
posted by 日菜清司 at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月09日

井筒

どこに行けば君に会えるということがない風の昼橋が眩しい (永田紅

眼球を貸していただけませんか
片想いの人が求めるので黒目をくりぬく
どうぞと貸してやる
いつものことである
膝も指も鼻も血液もあらかたの臓器も片想いの人に貸したままである
なにひとつ戻ってこない
貸せと云うから、貸す
すごいわ、
まだ名前のついていないありとあらゆる色が見えるわ、片想いの人は云う
ぼくが貸した脚をつけた片想いの人はせせらせせらと流れる川向こうへ歩いていく
名前のついていない色をちぎる
名前をつけてはぼくが貸した臓器に詰めていく
次は耳だろうか
20051217
posted by 日菜清司 at 19:13| Comment(2) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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