2006年04月25日

虹彩

手づくりのいちごよ君にふくませむわがさす虹の色に似たれば (山川登美子

新しい虹ができましたわ、恋人から虹を頂く
どこにでもある普通の虹である
それぞれの色の帽子を被った七人の小人である
帽子はわたくしが編んだのですよ、
どうぞかわいがってやってくださいまし、恋人は云う
小人をひとりずつ口に含んで口移ししてくださる
ぼくの口に虹ができる
そのまま持ち帰る
やはり虹であるから水の周りに置いたほうがよかろうと浴槽に小人を浮かせてやる
気持ちよさそうにゆらと泳ぐ
七人で美しい半円の虹の弧を描いてくれる
ほうと見惚れる
見惚れたまま眠ってしまう
迂闊である
うたた寝をしているうちに六人が溺れ死んでしまった
生き残った赤い小人と死んでしまった六人を口に含む
恋人に返しに行く
蘇生するだろうか
060413
posted by 日菜清司 at 19:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月14日

瀬音

まみえしはこの世の櫻ちる櫻腐る櫻よなれど遇ひにき (紀野恵

いつもぶかぶかの桃色の野球帽を被っている
川を歩いて渡るとき荷物を詰めるのである
鮭の燻製とブルーベリーヨーグルトとエジプトの地図を桃色の帽子に詰めて被る
川向こうに住むトミタトミミさんに届けるのである
旨いうまいと云ってそれを喰う
足りないだろうと胡瓜と生ハムのサンドウィッチを差し出したがいらないと返される
トミタトミミさんは燻製とヨーグルトしか喰わない
川向こうは風の流れが悪く死者の悪臭と腐敗がひどい
一緒に川岸へ戻りましょうと誘うがトミタトミミさんは首肯しない
かつては川岸で共に暮らしていたのである
荷物さえ届けてくれればよいと云う
次に火星の地図をと頼まれる
帽子が風で飛んでしまわないよう手で押さえながら川岸へひとりで帰る
此岸の風と彼岸の風が混じり合い螺旋の渦となって桃色の野球帽を舞わせる
すんと風が止む
川魚の泳ぐ音がいっとう高く打つ
ぴちゃ、ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃぴちゃ
いつかのトミタトミミさんの睦言がする
魚は列を成して川の流れに沿って泳いでいる
ぼくは川岸へと歩きはじめる
060414
posted by 日菜清司 at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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