2005年06月30日

ひだり

ぽろぽろと涙をこぼしきみは今やっぱりわたし以外のだれか (盛田志保子

片想いの人がひだりの腕を忘れて帰られる
ちゃんと傘をさせただろうか
これで31本目である
片想いの人はいつも取りに来られない
会うたんびあたらしいひだりの腕をつけてらっしゃる
片想いの人はたぶんぼくのものにはならないだろう
20050630
posted by 日菜清司 at 18:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月23日

膨らみ

メガホンをみている聾のおんなのこ、みみみみみみのかたちは宇宙

恋人が膨らむ
背丈やら目方やら感情やらなにやらが恋人でなかったときよりも膨らんでゆく
声も、笑い方も、泣き方も、怒り方も、料理の品目も、まぐわいの頻度も、隠れんぼごっこも、以前のそれとは違う
そのようにして恋人は日々膨らみつづける
恋人でなかったときはぼくより小さかったのであるが今では3倍ほどの背丈はあろうか
おかげでぼくの睦言が恋人の耳に届かなくなる
睦言は囁くべきである
しかし恋人に届くようにと叫ぶ
恋人は以前の3倍ほどの笑顔で3倍ほどの足をばったばったさせて喜んでくれる
また少し膨らんだようである
20050622
posted by 日菜清司 at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | my song | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月21日

魔法やさん

免許証みせて あなたが乗りこなす動物たちの名前をみせて (穂村弘

厚生労働省に第三種職業魔術師免許の更新へ行く
税金の申告やら違反魔術法改正やらのレクチャーを受けたのち役人の前で魔術の実演をしないと更新はできない
魔力の落ちた魔術師は免許を剥奪されるのである
ひょいひょいとアフリカ象を折りたたんで手乗り象を拵える
半分に折りたたんだ象を折り紙の要領でまた半分にする
この作業を幾度か繰り返すと手のひらに乗る象になるのである
それまでっ!、役人は云うと真紅のマントを背中に掛けてくれる
合格である
これであと5年は生計を立てることができる
手乗り象は両の耳をぱたぱたと羽ばたかせて厚生労働省の天井にこつんとぶっつかって元のアフリカ象の姿に戻りながら落っこちてくる
お昼休みの厚生労働省のロビーはちょっとしたパニックである
20048011
posted by 日菜清司 at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月17日

はなやまい/きいろ

海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり (寺山修司

しばらくお会いしなかったせいだろうかタケノコトリさんが黄色い
背中に生えていたふうわりとした羽根が消えてなくなっている
おでこから伸びていた2本の触覚も、ない
もう以前のように蝶にはみえない
はなやまいを患うと蝶のなりになるのである
両手にタケノコトリさんを載せてやる
さららさっさらりりらせせら、と云ってはタケノコトリさんはぼくの両手のうえでゆうらり泳いでいる
よろこんでいるのだろう
はなやまいを患うと感情がぎゅっと縮むのである
タケノコトリさんが見たこともないところへ連れていってやろう
きっとよろこんでくれるだろう
20050617
posted by 日菜清司 at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月13日

いる

マジシャンの助手の聾唖の美少女の鞄の鳩の眼の春の雪

恋人が消える
肉体をすぅと失うんである
恋人が消えると音もすぅと消える
今月になって四度目である
以前はこんなに消えることはなかった
せいぜい季節に一度ほどである
消えるといってもちゃんと、いる
コップは丁寧に洗われているし、
投げ散らかしたリモコンはいつの間にやら揃えられている
箪笥には季節の衣服が詰め替えられているし、
文庫本に挟まれた栞の位置はすこしずつ動いている
この部屋にはたしかに肉体と音を失った恋人がいるんである
時折ポケットがごっそりと、動く
退屈なんであろう
恋人は消えたきりである
20040622
posted by 日菜清司 at 22:35| Comment(0) | TrackBack(0) | my song | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月06日

火柱

獣のまんまおでことおでこくっつけて(ほのかにほのお)冬眠します

火柱は甘たるい
艶文を燃やしたせいだろう
ヴァニラの匂いの伸び上がる2本の流線型がくっついて1本の火柱になる
睦言は燃えやすいんでちいさな声でぶっつけあう
シーツには焼失を免れた生の睦言がごろり転がっている
睦言は獣の匂いがする
20050215
posted by 日菜清司 at 22:40| Comment(0) | TrackBack(0) | my song | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月02日

やがてなにもかもが泳ぎだす

夕ぐれの川べに立ちて落ちたぎつ流るる水におもひ入りたり (斎藤茂吉

片想いの人からいただいた鉢植えに水をやる
おや、と目をむける
鉢植えの土のうえに男の子やら女の子が、いる
小指ほどの大きさであろうか
男の子はみどりの帽子を、女の子は赤の帽子を被ってゆらり泳いでいる
葉がひらり、土のうえに落ちる
やがて葉はしずしずとみどりの帽子の男の子になってゆらり泳ぎだす
はじめからそんな気はしていた
葉を落とさないように世話をしてやらねばならない
男の子やら女の子は、そんなこと知りやしませんよな顔でゆらり泳いでいる
20050602
posted by 日菜清司 at 22:13| Comment(0) | TrackBack(2) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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