2005年05月28日

くっつく

灰色をねずみいろって言うひとがいるから冬はあったかいのだ (駿河朔

あたたかいね、
黒いねずみは云う
ほんと、あたたたかいわね、
白いねずみも云う
ね、あたたたたかいでしょ、
黒いねずみは白いねずみの右半分にくっついて云う
すごい、あたたたたたかいわ、
白いねずみも黒いねずみの左半分にくっついて云う
どうしてあたたたたたたかいんだろう、
黒いねずみは白いねずみをちょきちょき切り裂いて白いねずみの身体に入って云う
どうしてあたたたたたたたかいのかしら、
白いねずみも黒いねずみをちょきちょき切り裂いて黒いねずみの身体に入って云う
黒いねずみと白いねずみはくっついてもうおよそどっちが黒いねずみか白いねずみか見分けられない
天気予報のおねえさんが今日はこの冬でいちばんあたたたたたたたたたかくなるでしょうと云った
20050130
posted by 日菜清司 at 18:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月25日

下半身

ふらんすは遠いけれどもにくたいも遠いものだしいってらっしゃい (本田瑞穂

片想いの人から下半身をいただく
どこへ行くにもとことこと付いてくる
紳士便所に付いてこられるのはいささか困るが最初にきつく咎めてやると待合ロビーなんかで下半身はじつと待っている
わりに利口なんである
下半身であるから食事を食わせてやる必要はない
ときどき浴室で乾いた糸瓜でごしごしと洗ってやるわけである
何度か試してはみたがまぐわいがうまくいかないのは難儀である
致そうとするがうまく致せない
相関性についてはとんと不案内である
片想いの人はまだ上半身をくれない
20050316
posted by 日菜清司 at 22:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月21日

母の母の骨

ひら仮名は凄まじきかなはははははははははははは母死んだ (仙波龍英

赤い風船が空に吸い込まれて少女が泣いている
母の母が母のあたまをいいこいい子と撫でている
だいじょうぶよ、と
母は花のかたちをした赤い髪留めをつけたちいさな少女で母の母は若く、ずんとおおきい
背筋はしゃんと伸びている
こんな母の母を見たことはついぞない
いつもの母の母は手のひらほどの大きさで背骨はぐにゃりとひん曲がっている
母に半分ほどに折り畳まれて巾着袋ですうすう眠っているのが常である
母の母の骨は柔らかくぽきっぽきっと畳みやすい
ちいさな母は安逸な表情で背筋がしゃんと伸びた母の母を見上げている、というわたくしの長いまどろみであった
子どもの子どもに半分ほどに折り畳まれて巾着袋で母や母の母の夢をみながらまどろむのは安逸である
巾着袋のなかでわたくしの身体ががほつほつと縮んでゆくのを感じる
ちいさな母は赤い飴玉を舐めている
母の母の背骨は凄まじい速さで溶けてゆく
わたくしの長いまどろみはつづく
20050521
posted by 日菜清司 at 23:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月16日

ばらの花

ときどきひとりでカフェに座っているあの子
口元がやけに気の強そうな (林あまり


おや、と思ってジンジャーエールに目を落とす
水泡の一粒一粒に赤い帽子の女の子が、いる
およそ1,000人はいるだろうか
ぼくはくるりと目を廻す
程なくジンジャーエールの気は抜けて水泡の女の子はひとり、ひとりと、消えてゆく
最後の女の子がぼくににこりと笑いかけて、すぅと消える
片想いの人から頂いた一輪のばらの花がゆっくりと開く
テーブル・クロスに女の子が被っていた帽子が1,000も散らばっていて片付けるのは骨である
いつにもましてテーブルは甘たるい
20050516
posted by 日菜清司 at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月13日

天使たちのシーン2

逃避行できない我と君のため空いっぱいに描く星の地図 (俵万智

「かすが苑」で羽根を売るようになって久しい
クリスマスのころになると天使たちが羽根の修繕やら新調に押し寄せてめまぐるしい
それぞれの背中の寸法と体重に合わせた羽根を拵えるのである
クリスマスが終わるとかすが苑は閑散として懇意にしている天使たちと麻雀をして過ごす

めずらしく来客があった
くたびれた様相をした白鳥座である
どうもうまく飛べないのです、
ときどき羽根がすぅと消えてしまうのです、白鳥座は云う
ずいぶんと小さく汚れてしまった羽根をくるりと背を向けて見せてくれる
実際に2秒か3秒であるがすぅと消える
白鳥座の肩の寸法を測ってやり羽根の欠陥を修繕してやる
およそ直せない羽根はない
もう消えることはあるまい
新しい羽根は白鳥座に調和し白鳥座は羽根をより丁重に扱うのである
空いっぱいに堂々と君臨している白鳥座を天使たちと見る
ご機嫌な天使たちは羽根を広げて夜空の端から端を幾度も赤いループになって旋回する
ぼくはつぎつぎに新しい羽根を拵えて修繕を施すのである
天使たちは夜を通してぼくを見守るように鮮やかな旋回を繰り返している
20050511

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posted by 日菜清司 at 23:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 歌流歳歳 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年05月08日

バスタブの地盤沈下は深刻でさかなの眉を描いてあげよう

魚に誘われるままに池へ散歩にでる
瓢箪のかたちをした中くらいの児童公園ほどの池である
せっかくですからひと泳ぎいたしませんか、魚は云う
近頃の若い魚にしては丁寧な言葉遣いである
魚は衣服をぜんぶ脱いでは丁寧に畳んで池にするりと入る
池のなかにいると魚は地上にいるときよりずっと魚らしくみえる
ごいっしょにいかがですか、魚は水のなかからしきりとぼくを誘う
ぼくは衣服を脱ぐと魚がしたように丁寧に畳んで魚の衣服の隣に並べる
池のなかはひんやりとしている
足が底につかないのは心もとない
潜りますわ、魚は云う
潜るのですか、ぼくは問う
ええ、魚は云う
大丈夫、わたくしについてらしたら安全ですから、魚は答える
池はどこまでも深くいくら潜れども底につかない
いたく不安である
もうもとに戻りませんか、ぼくは魚ではないので水のなかでは言葉が話せない
泡にかき消えてしまう
もとに戻れる地点を見逃してはならないのだ
魚は潜るたんびそろそろと魚めいた表情になって乱雑な言葉遣いになっていく
んんんだよぉぉぉっ! てめえぇぇぇっ!
もうもとには戻れねえんだよぉぉぉっ、と
迂闊である
そんなのは衣服を脱ぐ時点でわかっていたのだ
20050508
posted by 日菜清司 at 22:43| Comment(0) | TrackBack(0) | my song | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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